雨
毎日蒸し暑いダルエスサラームですが、今日は久しぶりに雨が降っていて、涼しくて過ごしやすいです。でも、机の上にある温度計によると、気温30度・・。この温度計壊れているのかな。それとも、私は30度でも涼しいと感じるようになってしまったのか・・。
2005~08年にタンザニアで仕事した後、2010~12年に計1年、調査のためにタンザニアに滞在しました。2014年10月からダルエスサラーム大学政治行政学部で教えるためにタンザニアに戻ってきました。darはダルエスサラーム、journalは日記という意味です。イギリス留学についてはブライトン・ジャーナル(brightonjournal.blogspot.com)をご覧ください。
毎日蒸し暑いダルエスサラームですが、今日は久しぶりに雨が降っていて、涼しくて過ごしやすいです。でも、机の上にある温度計によると、気温30度・・。この温度計壊れているのかな。それとも、私は30度でも涼しいと感じるようになってしまったのか・・。
TEDxDarの続きです。年配の講演者のお話もよかったです。
1968年のメキシコシティ・オリンピックで、途中で転倒して膝を脱臼しながらも最後まで完走したマラソン選手、ジョン・スティーブン・アクワリ(John Stephen Akhwari)さん。彼はマラソンを始めた子どもの頃から、オリンピックに行くまでを話しました。オリンピックで怪我をして最下位でゴールした後、「どうして途中でリタイアして膝の手当てをしなかったのですか?」とインタビューで聞かれて、「タンザニアはレースを始めるために私をメキシコシティに送ったんじゃない。レースを終えるために送ったんだ(My country did not send me to Mexico city to start the race. They sent me to finish)。」という彼の名言が出てきたときには、参加者は立ち上がって拍手を送りました。
1963年に「ムペンバ効果」と呼ばれる発見をしたエラスト・ムペンバ(Erasto Mpemba)さんの話も良かったです。ムペンバ効果とは、熱い水の方が冷たい水よりも早く凍ることがあるというもので、彼は中学生のときに、学校の冷凍庫に牛乳を入れてアイスを作っていて、室温の牛乳よりも、沸騰させた熱い牛乳の方が早く凍ることを発見しました。物理学の先生に言っても信じてもらえず、その後ダルエスサラーム大学の先生が実験して確かめ、1969年にムペンバさんとその先生はこの現象について学術誌に発表しました。なぜ熱い水の方が冷たい水より早く凍るのか、いろいろ説明はあるようですが、まだ科学的に証明されていないようです。
イベントの最後は、ビ・キドゥデ(Bi Kidude)さんの歌でしめくくりでした。以前ブログで、NHKの番組を紹介しましたが、キドゥデさんは、推定95歳、ザンジバルのターラブという音楽の歌手です。ランチの時間に、奥のテーブルに座っているキドゥデさんと目が合ったら、「ンジョー(Njoo)(こっちに来てという意味)」とおっしゃるので、ご挨拶してきました。日本人で目立つと良いこともあります。以前のブログに「こういうおばあちゃんを目の前にしたら、びくびくしてしまいそう」と書きましたが、あたたかい方でそんなことはありませんでした。他の参加者にも声をかけたり、写真撮影に応じたりしていました。キドゥデさんの歌声を聞きながら、キドゥデさんが生きてきたザンジバルやタンザニアの時間の流れに思いを馳せて、贅沢な時間が過ごせました。
ちょっと時間が経ってしまいましたが、TEDxDar 2011の続きです。
他に印象に残った講演者は、タンザニア人女性として、初めて米連邦航空局(FAA)の認定する職業パイロットと航空機のメンテナンス・エンジニア両方の資格を得て、今はプライベート・ジェットの会社を経営しているスーザン・マシベ(Susan Mashibe)さん。
彼女は自分の半生について話をしました。スーザンは4歳のときに親戚の家に預けられて、両親と弟は当時住んでいたタンザニア北部の街キゴマを離れてしまうのですが、お別れをしたキゴマの空港で、両親と弟を乗せて飛び立つ飛行機を見ながら、もし自分があの飛行機のパイロットだったら、両親においていかれることはなかったのにと思ったのが、飛行機に関心を持つ最初のきっかけだったと話を始めました。私、この時点でちょっと涙が出そうでした。
その後、スーザンはアメリカに行く機会を得て、仕事をしながらパイロットとエンジニアの資格をとり、タンザニアに戻って会社を興しました。最初はダルエスサラーム空港の小さな一室を借りて、スタッフ1人だったところから、事業を広げていき、今は20人のスタッフを抱えていて、もう一つの航空会社も経営しています。
たまたまランチのときに隣の席に座ったので、会社の経営などについてもアメリカで勉強したのか聞いてみました。経営について学んだことはなく、試行錯誤しながらやってきたとのことです。飾らずフレンドリーで、とても素敵な女性でした。スーザンは海外の賞を受賞していますが、タンザニア国内でもロールモデルとして、もっと注目されたらいいなと思います。
TEDxDar 2011の続きです。まずはこのイベントのことを教えてくれた国会議員、ジャニュアリ・マカンバ(January Makamba)さんの講演。彼はアメリカに長く滞在していたこともあり、私がインタビューした議員の中でも特にシャープで、欧米の大学か研究機関のリサーチャーと話をしているような感じでした。
マカンバさんは「同一性(sameness)」をテーマに、最新の統計データを使って、今の平均的なタンザニア人女性(架空のこの女性の名前はザワディ)がどういう生活を送っているかを説明した後、タンザニアの上位20%の平均的な女性(名前はヴァネッサ)と比較しました。
ザワディは17歳で、村の泥壁の家に住んでいて、中学校には行っておらず、井戸に水を汲みに行きます。携帯電話を持っておらず、移動はほぼ徒歩で、肉や魚はめったに食べません。19歳で結婚し、19.5歳で最初の子どもを産み、36歳で最後の子どもを産みます。
一方、タンザニアの上位20%の平均的な女性ヴァネッサは、ザワディと同じ17歳ですが、都市部に住んでいて、大学まで進学することができ、家に水道が通っていて、ペットボトルの水を飲んでいます。日々の移動はほぼ車で、78%の確率で農業以外の仕事に就き、携帯電話を持っていて、よく肉や魚を食べています。23.2歳で結婚し、23.5歳で最初の子ども産み、32歳で最後の子どもを産みます。
子どもを産む年齢を比べると、ザワディの方がヴァネッサよりも子どもを産む年数が長いことがわかります。また、ザワディは自分が希望するよりも多くの子どもを産み(希望:4.7人、実際:5.5人)、ヴァネッサは希望するより少ない人数の子どもを産みます(希望:3.7人、実際:3人)。
マカンバさんは、ザワディがヴァネッサのような生活を送ることはできるのか?エネルギーや環境などを考えると、持続可能なのか?この講演に来ている人たちは自分も含めて、ヴァネッサのような生活を送っているけれど、私たちはザワディのために生活レベルを下げるべきなのか?といった倫理的な問いを投げかけました。(くわしくは、彼が発表で使ったパワーポイントをご覧ください。)
ザワディとヴァネッサの違いは、このあとの講演でもたびたび言及されました。私も貧富の差について考えるときに、自然とザワディとヴァネッサに置き換えて考えたりしています。